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2010年9月16日木曜日

Deep impression 印圧による表現

国内外問わず、本来の活版印刷は印圧を極力感じさせないキスタッチと例えられる印刷が高品質の証とされていたそうです。
用紙に形がつく程の印圧が嫌われたのは、インキの裏抜け、印刷所にとっての財産である印刷機と活字を消耗させるという理由とともに、形式美的な価値観の要素もあったようです。
それは、印刷する人の技能によって品質の差が大きく出るため、高度な技能の証という誇りが産んだ価値観のようにも思えます。
欧米でも同様のようで、「Deep impression」などのキーワードでWebを検索すると賛否両論の議論を見掛けます。
(貴重な活字に強い印圧をかけて消耗させるのは、私も好みません)

同じ凸版方式の仲間である活輪やフレキソ印刷、シールラベル印刷のように専門特化した例を別として、商業印刷の分野において活版印刷は極めて少数派になっています。
このような状況の中、私が活版印刷に興味を持ったのは、アメリカのLetter Press作品でよく見掛ける、印圧による彫刻やレリーフのような表現への興味からです。
これらの作品は、主に金属版や樹脂版によって印刷されており、自由なデザインが可能で、貴重な活字を消耗させることもありません。
letterpressというキーワードで画像検索
すなわち、箔押し、空押し(デボス)、エンボス加工と同様、インキを加えた表面加工という感覚です。

紙には、視覚だけでなく触覚(時には嗅覚も)をも刺激するメディアとしての可能性があり、印圧による表現(空押し、エンボス、箔押しを含む)ができる活版印刷機にはとても魅力を感じます。