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2017年11月18日土曜日

【印刷実験】水性インキと活版印刷

昨日は、ある作家さんの立ち合いのもとに作品の印刷を行いました。
12センチ弱の長方形の用紙に文字のみの印刷ということで、普通に刷る分には何の問題もないのですが、今回は特別なリクエストがありました。
「印圧を強くして文字に凹みをつけ、ムラやカスレと滲みが欲しい」とのこと。
当初は活字を使う案もありましたが、強圧を掛けることもあり見送ることに。
凹凸のある用紙を選び、胴張り紙にエンボス系の紙を用いることで意図的にムラやカスレを狙うことにしました。
5種類のエンボス紙を用意して、テスト開始です。
















印圧が低いとムラやカスレは出るのですが、文字が凹むほど印圧を掛けていくと期待するほど効果が出ませんでした。
また、滲みの効果はインキ量を多くして狙ってみるつもりだったのですが、カスレ、ムラにとっては逆効果。
そこで作戦を変更して水性インキを使ってみることにしました。
水性インキは業務で用いることはほとんどありませんが、ワークショップ用に用意してあるのです。
ローラー上の水分を調整してから版にインキを着けた後、水を含ませたウェスで部分的に版を湿して印刷することで、作家さんの意図した箇所にムラや滲みを刷り取ることができたのです。
作品の一部分でもお見せしたいところですが、発表前の作品ですので今回は控えておきます。
















当初は印刷立ち合いの予定でしたが、インキ量と水分量のコントロールが作品創りのキモとあって、結局全ての印刷を作家さんに委ねることにしました。
















原稿を忠実に再現するのを良しとする印刷人にとって、カスレ、滲み、ムラにはとても抵抗感がありましたが、制作意図に従ってコントロールする感覚はとても刺激的で創造的に思えました。
偶然性に左右される部分もあり、これもまた楽しいです。
良く考えれば木版画やフレキソ印刷でも水性インキを用いますので、活版で使ってはいけないという事はありませんね。
刷っている間にローラー上の乾燥が進むので、水分量のコントロールがポイントになるのと、金属製のローラーのケアに注意が必要なことでしょうか。
それと木活字の場合は表面のシェラックニスが傷みそうですが、リペアの覚悟と引き換えに面白い効果が狙えるかもしれません。
凹みがありながらも、カスレ、滲み、ムラを作る手法は引き続き研究課題にしたいと思います。
ワークショップでも水性インキをお選びいただくことができますので、研究したいという方がいらっしゃいましたらぜひお知らせください。