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2011年4月11日月曜日

手フートの飼い方⑦ トラブル診断

今回はプライベート・プリンターさんからのご相談事例です。
 ・活字(版)にインキが付かない
 ・印刷ムラが出る
とのことで診断させていただくことになりました。
インキローラーはあまり使用感のない良い状態で、直径は「なに活」のものと同じ35㎜。
特に不具合は見受けられませんでした。
早速ローラーセッティングゲージで診断を開始します。
本来でしたら、版胴とローラーの間に差し込んだゲージにインキが付くはずなのですが、ご覧の通り大きな隙間が空いています。
活字の高さは生産国や鋳造所によって僅かに異なりますが、何れにせよこれだけの隙間があるとインキは全く供給できません。
飼い主さんは、活字やメタルベースと版胴の間に厚い紙を挟んで調整されているそうです。
ムラ取り目的の薄紙ではなく、1㎜以上の厚い紙を敷くのは印刷ムラの原因になっている可能性があり、早く本来の姿に戻してあげたいものです。
(参考)活字の高さ
1962年(昭和37年)に制定されたJIS規格によると23.45㎜です。
許容差は±0.03㎜(3~24ポイント)、±0.04㎜(26.25ポイント以上)
参考資料 JIS Z 8305-1962 活字の基準寸法

版胴には大きな凹みも無さそうで、なぜこんなに大きな隙間が生じるのか不思議だったのですが、インキローラーのコロを調べてみて判りました。
なに活の同じ手フートのものに比べて、直径が約3㎜も大きいのです。
すなわちローラーの高さでは約1.5㎜も高いことになります。
また、なに活の3台の手フートのコロは全て厚いメッキで覆われているのに対し、こちらは剥き出しの鉄素材のため錆の跡も見受けられ、角の加工も異なります。
あくまで想像ですが、以前のオーナーさんが特殊な版に合わせて加工されたコロではないかと思います。
また、困った事にノギスで径を確認すると僅かに差があり、一部で径が異なることも判りました。
コロはインキをムラ無く供給するのに重要な役割を果たしますので大変心配です。

ここで飼い主さんと作戦タイムです。
考えた対策は3つ。
(a)活字やメタルベースの下に敷く紙を硬いものに変える。
(b)コロを削って小さくする。
(c)インキローラーを太く巻き替える。

(a)は本来の姿に近づけるという趣旨からバツ。
(b)は1点ものの加工を引き受けてくださる工場に心当たりが無く、仮にあったとしても万一の加工ミスのリスクは負えないとの判断でバツ。
その結果、(c)のローラー巻き替えをする事になり、手フートをお預かりしました。
ローラーの巻き替えにより、(1)の「活字(版)にインキがつかない」という問題が解決できる見込みになりました。

完治の兆しが見えてきて少し安心しましたが、1つ気掛かりなのは例のコロです。
ローラーの径を太く調整しても、肝心のコロが綺麗に回転しなければムラになったり、インキが付かない部分が出るかもしれません。
新調するローラーのためにも念のために詳しく調べておくことにします。
今度は通常より大きなローラーセッティングゲージを使って測定をしていきます。
ゲージについたインキの幅をコンパスで測り、物差しで数値を読んでいきます。
数値が小さければ接触が弱く(ローラーが高い)、大きければ強い(ローラーが低い)ことになります。
前に述べた通りコロは径が約0.3㎜異なるものが混在しています。
ほぼ同じ大きさのもが2個づつありましたので、組み合わせ方を3パターン想定して測定してみました。
下の表が結果をまとめたものです。大変なことが判明しました。
測定場所は版胴の上、中、下と、左、中、右として9カ所を測定しました。
念のため2回目の測定をすると、測り間違えたかと思うほど大きな差が出たため、3回づつ測定することにしました。
なに活のコロも合わせて108回の繰り返し作業となりました。(ゴ~ン)
元のコロはどの条件でも測定の度にバラツキがあったり左右のバランスが悪く、残念ながら偏摩耗や偏芯した精度の悪いコロと判断せざるを得ない結果となりました。
「買ってはいけない手フート」だったのかと落ち込んで相談に来られた飼い主さんの残念そうな表情が蘇ります。

この結果を見てやはり原因であるコロを何とかしなくてはいけないと思い、飼い主さんに1つの提案をしました。
飼い主さんはしばらく前に購入されたそうですが、自分の調整の仕方が悪いのかも?とずっと試行錯誤されておられ、購入したお店に相談されていなかったそうです。
今回の診断でローラーコロに問題があることがはっきりしましたので、購入したお店に事情を説明してローラーコロの交換をお願いしてはいかがでしょうか、とお伝えしました。
飼い主さんから連絡を受けた購入店から、すぐに替わりのコロが送られてきました。
ヤスリで磨いたと思われる縞模様が気になりますが、影響は少ないと判断してテストをすることにしました。
インキディスク、ローラーレール、ローラーコロにヤスリや電動工具は避けてください。
巻き替えをキャンセルしたローラーが戻ってきましたので、ローラーセッティングゲージで測定をします。
気になる結果は・・・問題なし!
前回のテスト同様3回繰り返しましたが、バラツキは誤差の範囲内でした。
課題は残るものの、印刷テストもまずまずの結果。
あとはローラーの高さ、胴張り、圧胴の調整でベストセッティングを探ればOK。
調子を取り戻した手フートを飼い主さんにお返しすることができて良かったです。

今日のひとこと
「トラブルの解決は原因を知ることから」

次回は「胴張り」です。

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