空押し(デボス)は、金属版や樹脂版などの凸版で用紙を凹ませる加工です。
インキを着けずに刷る活版印刷という感覚なので、取り組みやすい加工であるものの、実は意外と奥が深い加工です。
空押しの魅力を十分に引き出すためにお伝えしたいことをまとめてみました。
エンボス加工との違い
凹の型(雌型)と凸の型(雄型)で用紙に圧を加え、浮き出しとなるのがエンボスです。
紙に立体的な加工を施すという点では空押しに似てるとも言えますが、全く別の加工としてその違いを認識しておく必要があります。
(上)雌型 (下)雄型
エンボスは紙の断面が凹凸状になりますから、浮き出した面の裏面は当然凹んでいます。
よって、裏面の絵柄との兼ね合いに注意する必要があります。
また、厚い紙に細い線や文字の組み合わせの場合、浮き出しの量が不十分になることがあり、この点にも注意が必要です。
エンボスについてご興味のある方はこちらの記事もどうぞ。
【印刷実験】エンボス加工あれこれ
http://kappan.did.co.jp/2013/03/blog-post_14.html
一方、基本的に空押し(デボス)の裏面は平らです。
(後述しますが、制作意図によりあえて凸にするケースもあります)
しかし、用紙の種類や圧の掛け方などによって僅かに跡がつくことがありますので、裏面のデザインへの影響も含め、十分な打ち合わせが必要です。
用紙の種類
薄い紙は凹みが浅くなりますので空押しにはあまり用いません。
厚紙が使えない用途の場合は、エンボスの方が良いかもしれません。
通常は凹みが目立ちやすい紙厚0.4mm以上をおすすめしていますが、薄めの紙で凹みを目立たせるために胴張りを柔らかく仕上げる方法があります。
柔らかい胴張りが凹版の役割りをして裏面が凸状になりますが、エンボスとは異なり、凸部のエッジがボケてしまいます。
出来損ないのエンボスのような印象を与える可能性もあり、この場合はしっかり用途を選ぶ必要があります。
紙厚0.4mm以上となると、嵩高の紙で<180>からになりますが、下の画像にある通り、紙厚は同じ連量(坪量)でも銘柄によって大きく異なります。180>
特殊紙の場合、紙厚の判断は連量(坪量)ではなく、見本帳などで現物を確かめるのが基本です。
(お手元に現物が無い場合はお問い合わせください)
連量(坪量)と紙厚の関係から、紙の硬さの傾向も見えてきます。
すなわち、同じ厚さの紙でも、軽ければふんわりした嵩高の紙、重ければ締った硬い紙と言えます。
紙の表面にテクスチャのあるものは、空押し部分が平滑になることで凹みが強調されますが、硬い紙はその効果が期待できない場合もあります。
なお、凹み具合は用紙の硬さや腰などや、デザイン(版の面積や混み具合)、印刷機の種類(プラテンorシリンダー)にも大きく影響を受けます。
用紙の色
白以外の用紙では凹みが目立ちにくくなりますが、下の画像の(上)のように濃色でも視認性が良い場合もあります。
空押し部分に圧による光沢が出て、マット調の白紙部分とのコントラストが出ると、濃色の紙でも空押しの存在感がでます。
一方、逆の理由で(下)のようにほとんど目立たない場合もあります。
紙色の濃淡以外にも注意が必要で、視認性が心配なときは本紙校正が安心です。
凹みの強調と演出テクニック
絵柄の内容や用紙の種類によっては、空押し部分の視認性が不足していると感じる場合があるかもしれません。
特に、文字や細い線の場合や、空押しを主役とする場合に、もう少し目立たせたいという事があります。
そんな時に使う凹みの強調と演出方法をご紹介します。
空押しとはちょっと違った効果を使いたいという時にも応用できます。
デザインのコンセプトによって、最適な加工方法をご検討ください。
熱空押し
熱空押しと言えば、パチカ、OKムーンカラー、OKフロートなどで、加熱部の色を変化させる加工としてご存じの方も多いと思います。
なに活では、通常の空押しでも凹みを強調したい時に用いることがあります。
下の画像は、空押しと熱空押しの比較です。紙、版、印刷機など、他の条件は全く同じです。
画像では判りにくいですが、エッジの立ち方がシャープになり、空押し部の色が僅かに濃くなっています。
(左)空押し (右)熱空押し
メディウムや同色系インキによる印刷
空押しではなくなりますが、メディウムや紙の色と同色系のインキ(白い紙には白インキ)で刷ることによりコントラストがつき、視認性が高まります。
主にインキを薄めるのに使うメディウムは、僅かに黄みを帯びています。
黄みの加減は、インキの盛り量と用紙の種類により変わります。
(上)が空押しで、(下)がメディウムで刷ったものです。
メディウムに他のインキをほんの少し加えると、華やか雰囲気になります。
下の画像ではプロセスブルーを混ぜています。(上)と(下)は配合量の違いです。
下の例はメディウムにスミを僅かに混ぜています。
透かしのような雰囲気にもなります。
糸で縫った雰囲気を白インキで表現する予定でしたが、刷りだしたところ少し印象が弱い感じがしました。スミをほんの少し混ぜたテスト刷りをお客さまにご提案させていただき、スミ配合のインキに変更となりました。
スミを入れすぎると糸の雰囲気が出なくなってしまうので、配合のテストは念入りに行いました。
(上)は白+スミ少し、(下)が白のみの印刷です。
印刷実験とサンプルプレゼント
久しぶりに印刷実験をしました。
絵柄(飾り罫)と文字が、空押しでどのように再現されるかをご覧いただこうと、なに活のショップカードの版で実験です。
用紙はクッション紙の0.6で、空押し、メディウム、メディウム+スミの3種を試しました。
この紙はインキを良く吸って発色が鈍くなる傾向があり、空押しとメディウムの差はあまり出ませんでした。
空押しの場合、特に小さな文字の視認性は物足りないと感じました。
印刷実験【クッション紙と特Aクッション】
http://kappan.did.co.jp/2011/02/blog-post_24.html
(左)空押し (中)メディウム刷り (右)メディウム+スミ刷り
印刷実験で作成したサンプルをプレゼントします。 終了しました
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