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オールド活版印刷機でレタープレス、箔押し、エンボス、デボス、バーコ(盛上げ)、小口染めの印刷・加工をしている大阪の活版印刷所【なに活】です。
名刺、招待状、ステーショナリー、年賀状のカスタムプリンティング承ります。 ワークショップや、活版印刷機の時間貸しもしています。

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2017年2月23日木曜日

活版印刷って面倒くさいんです

あまり気のりしないのだけれど、他社の製品についてセカンドオピニオンを求められたり、刷り直しを依頼されることがあります。
そんなご相談がこのところ増えてきていて、昨日もそんなお電話がありました。
不満の内容にはそれぞれ色んな理由があるのですが、大半の原因は情報の偏りと意志疎通の不足によるものと思います。
正直、またかよって思ったので発注者の方に知っていただきたいことを整理したいと思います。

オフセット印刷との違いを理解する
まずご理解いただきたい事は、高度にシステム化・自動化が進み、用紙の銘柄も限定的な最新のオフセット印刷と、手工的な要素さえ色濃く残る活版印刷や特殊加工の発注を同じように気軽にできると考えるのは無理があるという事です。
これは活版印刷が古いアナログ的な仕事だからというだけでなく、版から紙に直接インキを転移させる直刷りという特性への理解も大切です。

直刷りには限界がある
オフセット印刷の基礎となった石版(平版)も当初は直刷りでしたが、印刷中の失敗がきっかでブランケットによる転写(オフセット)の方が綺麗に刷れる事が判明し、これがオフセット印刷の発明となったことは印刷人であれば誰もが知る歴史です(正確には再発明ですがここでは触れません)。
それほどゴムブランケットの有無による影響は大きいのです。
デザインをする上で直刷りの特性についての理解は大変重要です。
詳細は次の機会に譲りますが、特にご注意いただきたいのがアミの再現性の限界(通常は100線を基準に用紙と絵柄を考慮して決める)と、重い絵柄と文字の両立が難しいことです。
これらの直刷りの特性への対処法はありますが、用紙の種類が限られたり、コストアップになるのを許容できるほど拘るポイントかという事で、たいていの方はNOのお返事になります。
100線のアミは肉眼で視認できますので、文字のアミ掛けは基本的に避けていただくのが良いでしょう。
あえて昔の新聞の写真のようなアミの粒子感を狙うのであれば、画像編集ソフトで100線以下をお試しいただくのが良いと思います。
ほとんどの機械が単色機であることと、アミの再現性の点から、最近の活版印刷で掛け合わせで色を表現することは少なく、特色ならではの発色の良さをデザインに取り入れるのが一般的です。
コストの制約さえ除けば何版であろうと印刷可能です。
なお、活版全盛期には3色または4色によるフルカラー印刷が行われており、活版印刷でフルカラー印刷が出来ないというのは都市伝説です。
ただし、胴仕立てには特殊なノウハウが必要で、濃度管理も難しく、平滑度の高いアート紙でも150線程度となるため、今でもフルカラーで刷っている活版印刷所は日本では皆無に近いと思いますが、凸版を用いるという点で共通点のあるフレキソ印刷業界ではフルカラー印刷のノウハウを持つ印刷会社があります。

雑誌やネットだけが情報源では危ない
特殊印刷や特殊加工に興味のある方ならば、専門書やインターネットで調べものをされた事があると思います。
詳しい解説や写真、動画など、眺めるだけでも楽しいくらい豊富な情報に触れることができますが、誰でも同じ物が出来ると思うのは危険です。
1mm厚の柔らかいコットンペーパーでがっつり凹んでいる画像と同じようにしたいと言っても、0.3mm厚の薄くて硬い紙では凹み代がありませんもの。
どうしてもとなれば、出来損ないのエンボスよろしく裏面に凸が出るようにするしかないですし、文字の品質と引き換えになってしまいます。
同じ仕様でないと、同じ仕上がりにならないというのは理解しやすいと思います。
ややこしい事に、同じ仕様でも印刷機が違うと同じ仕上がりにならない場合があるのです。
また、空押し(デボス)とエンボスを混同したお問合せも多く、デザイン案を拝見してデザイン、加工方法、用紙のミスマッチに気づくケースが多いです。
何度かブログで取り上げていますが、いまだ定番の事例です。
特殊印刷・加工に不慣れな内は早めにご相談いただくのが良いと思います。

印刷機の種類と仕上がりの違い
活版印刷機には手動式、自動式、平圧式、円筒式、(輪転式)と様々な構造を持つ機種があり、それぞれ得手不得手という個性があります。
簡単に言えばオフセット印刷機よりも基本構造のバリエーションが多いという事です。
例えば名刺を刷る機械といっても様々の種類があり、それが印刷所の得手不得手ともなる訳です。
ベタを依頼するのに、手動式でローラーが2本の印刷機となれば自ずと仕上がりに限界がある訳です(あえて不完全さを狙うのであればアリです)。
では自動機が万能かと言うと、そうとも限りません。
手漉き和紙には手差しの機械でないと刷れないものもあるのです。

オペレーターの価値観
驚かれる方が多いですが、活版印刷の全盛期は用紙を凹ませるのは下手の証しという価値観でしたから、今でも用紙を凹ませることに強い違和感を感じる印刷人がいることも忘れてはいけません。
活字を使った印刷の場合は特にそうで、強圧をリクエストしても断られることが多いはずです。
凹みを付けるか否かで版の種類を考慮したり、胴張りの仕立て方からオペレーションまでを変えなくてはなりません。
柔らかい胴のまま強圧を掛けると、出来損ないのエンボスの出来上がり。
仕上がりのイメージがオペレーターと共有できていれば、おかしな物にはならないはずです。

凹みに関わるパラメータ
印刷機の構造(平圧かシリンダーか)と胴張りの仕立て方は凹み具合に影響しますが、その他に、
 ・絵柄の面積
 ・絵柄の混み具合
 ・紙の厚さ
 ・紙の硬さ
 ・版の硬さ
 ・版のエッチの深さ
 ・版の温度(熱空押し)
という要素が加わります。

カスレ・ムラについて
古い木活字を刷った時のような偶然のカスレやムラを期待される方もおられるかもしれません。
私は自分の作品以外であえてカスレやムラを出す事は基本的にやりませんので、カスレやムラはデータ上で再現していただくようお願いしております。
製版したばかりの樹脂版では着肉性もよく、あえてカスレさすのが難しい位です。
それでも絵柄の面積がベタに近かったり、硬いエンボス系の用紙の場合は出ることがあります(いつも決まった銘柄なのですが、固有名詞は避けておきます)。
圧を強くしたり、インキ量を増やしたりという対策はあるのですが、樹脂版の場合は文字が太ったり潰れ気味になることがあります。
そういう時は潰れかカスレのどちらを優先するかということになります。
どちらも譲れないとなれば、版種を変えたり、版を分けたりという選択肢も出てきます。

つまり活版って面倒くさいんです
文字ばかりでウンザリした方も多いでしょう。
そうです。活版て、すごーく面倒くさいんです。
だから商業印刷の主役でいられなくなったんです。
初めての印刷所にデータ投げるだけで思う通りのモノが出来上がってきたら、それは運が良かっただけですね。
お客さまにも喜んでいただけて、自分も良い仕事できたなって実感できる仕事の共通点は、見積もり段階からお互いにゴールを共有できていた気がします。
遠距離で直接お目に掛かった事のないお客さまでも、距離感を感じないんです。
仕上がりに不満があっても、当事者同士でそれを話し合うこともなく(または、その機会を持てずに)また他所に依頼するという方法では、いつまでたってもゴールに辿り着けない気がします。

見積りについてのお願い
今、なに活には2台の自動式プラテン機、2台の手動式シリンダープレス、5台の手動式プラテン(手フート)があります。
先に述べた通り機械によって得手不得手があり、仕事の性質によって使い分けています。
名刺1色いくら?という様に値段ありきのお問合せだと、まずはデザインの内容、用紙、版種、凹みの希望、枚数などをお尋ねしていきます。
お客さまにはお手数をお掛けしますが、ゴールを共有するための大切な過程と考えています。できる限り詳しくご要望をお聞かせいただけると有難いです。
お悩みの点や不明な点がありましたらお気軽にご相談ください。

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