ワニという名のプレス Gordon's Alligator press
先日のイベントで,印刷機のニックネームについての話題になったとき、アリゲーター(ワニ)という名のプレスをご紹介しました。
ニューヨークのプリンターだったGeorge P. Gordonが1851年に作ったゴードン・アリゲーター・プレスは、世界的に普及したフートプレス(Jobbing Platen Press)の原型にあたります。
インキ盤が回転する円盤ではなく、反った板のようになっていることもあり、なんとなくワニのように見えますね。
このプレスは動作が急なため、たくさんのプリンターたちが手に怪我をしたという曰くつきのプレスです。
数年のうちに次々と改良されたプレスが作られましたので、そんな怖いプレスは誰も使わなくなったのでしょう。
19世紀のプレスが珍しくないアメリカですが、現存するのは1台のみのようです。
(http://letterpressprinting.com.au/page88.htmより引用)
偉人の名を持つプレス Gordon’s Franklin Job Press
アリゲーター・プレスの後、発明と商いの才に恵まれていたゴードンは、世界的に普及することになるフートプレス(Jobbing Platen Press)で成功を収めます。
ゴードンは自身のプレスに、アメリカの偉人ベンジャミン・フランクリンの名を与えました。
政治や科学など幅広い分野での偉業で知られるフランクリンですが、自作の墓碑銘に自らを「プリンター」と名乗るなど、印刷と深く関わった人でありました。
印刷に携わった者という以外に縁も所縁もない偉人の名前を冠した理由は、ゴードン曰く「夢に彼が出てきて、この印刷機のアイデアを教えてくれたから」だそうです。
実のところは、ゴードンに先駆けて革新的なプレスを発明したStephen P. Rugglesとの特許に関する確執がその背景にあったようです。
Rugglesは活版印刷機の進化に大きな功績のあった人ですが、時はゴードンに味方したかのようです。
(http://letterpresscommons.com/press/gordon-franklin-oldstyle/より引用)
グーテンベルグのプレス Gutenberg Press
これはその名の通りグーテンベルグの手引き印刷機を復刻したプレスです。
15世紀半ばから圧盤や加圧装置に金属部品を用いるなど改良が加えられながらも木製プレスの時代が約350年も続いたことに驚きます。
製作者の名を冠したプレスは珍しくありませんが、やはりこのプレスは特別です。
バッタという名のプレス Grasshopper Press
1880年ころのThe Prouty Country Newspaper Pressというプレス。
シリンダーを動かす棒状の部品がバッタの足に見えことから、ニックネームはGrasshopper(バッタ)。
大きなシリンダー(円圧)プレスですが、手動式です。
風車という名のプレス Heidelberg Windmill
このプレスは、用紙をつかむ2組のグリッパーという部品が回転します。
その様が風車の羽根のように見えることから、アメリカのレタープレスプリンターの間では風車(Windmill)という愛称で親しまれています。
正式名はティーゲル(Tiegel)ですが、この名を聞くことはまれです。
グリッパーのユニークな動きは、ブログの過去記事でも紹介しています。
http://kappan.did.co.jp/2010/09/windmill.html
揺り子という名のプレス Rocker
1909年から発売されたVandercook最初期のRocker(振り子)というプレスです。
岩をも砕く(Rock Crusher)というのがネーミングの由来という説も。
またおもしろいプレスが見つかりましたらお知らせします