DAY 8 : 10月7日(火)アトランタ(ジョー ジア州)
手漉き紙の工場を立ち上げ、自身の手による活字で書物を出版したDard Hunter。
紙漉きの研究のために世界を旅し、手漉き紙や紙漉きの道具などを収集し、たくさんの著書を残したこ とで知られています。
研究の対象は日本の和紙にも及び、1933年(昭和8年)には来日もされています。
彼のコレクションを見てみたくて紙の博物館Robert C Williams Paper Museumを訪問しました。
中国に始まる紙漉きの起こりから製紙術の伝搬、機械漉きへの発展が展示されています。
和紙のコーナーもあり、百万塔陀羅尼が展示されていました。
原料の紹介コーナーには見慣れた木やコットンに加えサボテンがありました。
サボテン紙は強度が出ないため 、普及することはなかったそうです。
レンタカーでナッシュビルに移動。約400km4時間のドライブです。
単調な直線続きで睡魔に襲われましたが、事故を目撃して目が覚めました。
今日の気になる文字はこれ。
落ち着いた色使いだけどインパクト抜群でした。
DAY 9 : 10月8日(水)ナッシュビル(テネ シー州)
カントリーミュージックの街として知られるナッシュビルにあるHatch Show Printに来ました。
音楽、映画をはじめとした広告宣伝のポスターを得意としてきただけに、大きな木活字や木版がたくさ ん並んでいます。
全盛期は1950年代に過ぎたとは言うものの、今でも年間500~600種類ものポスターを印刷しているそう 。また、切手のデザインに関わるなどデザインワークの舞台も拡げています。
作品を販売するショップには、壁一面にポスターのサンプルが掲出されています。
ポストカード、Tシャツ、ステッカー、缶バッチなどのグッズも充実しています。
眺めているだけでも楽しいお店ですが、きっと何も買わずにお店を出ることはできないでしょう。
ギャラリースペースではTYPES OF BUGS : BUGS OF TYPEという作品展が開催されていました。
木活字を中心にレコード盤などを版にして昆虫をデザインした作品たちは、書体のチョイスや繊細な色使いがとても魅力的で、今にも動きそうに活 き活きとしていました。
アーティストのBill MoranはHamilton Wood Type & Printing Museumのアートディレクターでもあります 。
今日の気になる文字はこれ。ホテルのフロントです。
これを見るためだけにやってきました。
宿泊者ではありませんが、快く撮影の許可をいただけました。
DAY 10 : 10月9日(木)ツーリバース(ウィスコンシン州 )
次の目的地はHamilton Wood Type & Printing Museumです。
飛行機でグリーンベイに移動。ナビなしのレンタカーしか無くて、しかもWi-Fiの電波も入らないので 、紙の地図だけが頼りです。
案の定、近くまで来て迷ってしまいました。地元の方に道を尋ねると親切に教えていただき、無事到着すること ができました。
建物に入るとBobが出迎えてくれ、ミュージアムのガイドをしてくれることになりました。
ショーケースのガラス戸を開けながら、たくさんのコレクションを紹介してくれていた時、2つのAを取り出して見せてくれました。
一見では同じ書体なのですが、よく見ると細部のデザインが僅かに異なっていました。
側面には別の社名の刻印があり、同業者を合併してきた歴史を教えてくれました。
次に生産工程の案内をしてくれました。
原木のカット、乾燥、サンディングの工程を経て彫刻の工程です。
パンタグラフという器具で文字の原型をなぞり、連動したルーターで木を彫刻した後、彫刻刀で手仕上 げをして完成です。
展示だけでなく、木活字の製造技術を継承するWorking Museumとして2名の若手がパンタグラフオペレーター として技を磨いているそうです。
ワークショプの開催や印刷機のレンタルもあり、木活字の印刷体験から本格的な作品づくりに取り組むことができます。
この日もお一人の女性プリンターが作品づくりに没頭されていました。
広いギャラリースペースには、スチームローラー(工事現場で地固めに使う重機)で擦った大きな木版プリントの展示がありました。
ディレクターのJimと話してい たとき、Hatch Show PrintでTYPES OF BUGS : BUGS OF TYPEを見てきたことを話すと、アーティストの Billとは兄弟ということでした。
モーテルにチェックイン。鍵をもらって部屋を開けたら先客がいて???
安モーテルをはしごしているので少々のトラブルには驚きませんが、さすがにこの事件にはびっくりしました 。
今日の気になる文字はこれ。トラブルにもめげず、前進あるのみ。
DAY 11 : 10月10日(金)シカゴ(イリノイ 州)
レンタカーでシカゴに移動。約300km3時間のドライブです。
アメリカのハイウェイは全てフリーウェイと思っていましたが、シカゴ郊外には有料の路線もありました 。
本線から逸れた有人の料金所で料金を支払いましたが、下調べしていなければ無人の料金所に突入していたか もしれません。
車が渋滞しだしたころ、シカゴの高層ビル群が見えてきました。
ニューベリー図書館で、レオナルド・ダ・ヴィンチの手稿という説もあるニューベリー・ アルファベット、グーテンベルグの四十二行聖書(1シート)、ケルムスコット・ プレスの黄金伝説とトロイ戦史抄などを閲覧しました。
身分証明を提示してReaders Cardを取得すれば、特別室で貸し出しをしてくれます。
今日の気になる文字はこれ。シカゴの消防車を見て、映画のバックドラフトを思い出しました 。
DAY 12 : 10月11日(土)シカゴ(イリノイ 州)
Center for Book & Paper Arts(CBPA)を訪問しました。
アポ無しでしたが、快くスタジオを案内してくださいました。
印刷から製本まで学べるほか、暗室も備えています。
また、CBPAは本格的な紙漉きスタジオを備えています。
右奥に馬鍬と漉き舟が見えます。
別室にはホーレンダービーターが4台もありました。
オフセット印刷機の操作を学ぶこともできるのもCBPAの特長の1つ。
これまで2名の方が操作をマスターしたそう。
CBPAで紹介してもらったAnchor Graphicsはエッチングプレスとリトプレスを持つ版画スタジオ。
機材 のレンタルも可能とのことです。
The Papermaker's Gardenはシカゴの街のど真ん中で、いろんな植物を育てて紙を漉くプロジェクト。 これはおもろい!!!
いくつかのブロックでは刈り取られた跡がありましたが、ど んな紙になったのでしょうか。
今日の気になる文字はこれ。
ゴミ捨て場とファンシーな壁画のコントラスト。理想と現実。
DAY 13 : 10月12日(日)
紙、レタープレス、製本に関わる人たちとの出会いと学びを求めて、駆け足で6都市を巡ってき た旅も今日で最後です。
訪問先ではレタープレスのみならず、タイポグラフィーやブックアートを含めて体系的に学ぶ場、発表する場、交流する場が充実しているように感じました。
この旅で出会った人たちは、タイポグラフィーやブックアートの領域にも造詣が深く 、新しいものづくりへの情熱に満ちていました。
熟練者は若手に技術を伝承する機会を惜しまず 、継承者たちはパソコンを接続した活字鋳造機やレーザーを利用したオリジナルの木活字や写真版、木活字書体のデジタル化など、新しい技術も取り入れながら現代のレタープレスシーンを牽引していました 。
また、ミュージアムでも展示のみならず「技術の継承」をとても大切にしていて、Working Museumとして機械の維持・メンテナンスと後進の育成を怠らない姿勢に共感を覚えました。
また何時の日か再会できることを願って帰国します。
少し先になる予定ですが、この旅で得られた収穫をまとめてZINEを発行したいと思っています。
レタープレスの、レタープレスによる、レタープレスファンのためのZINEにする予定。
ご期待ください!