印刷条件は印圧と胴張りの仕立て方以外は同じです。
用紙はクレーンレトラの0.5mm厚で、版は亜鉛版です。
左から順に印圧を強くしています。
(それぞれ胴張りの仕立てが異なります。)
圧を掛けると色が濃くなりますので本来はインキ量の調整を行う必要がありますが、今回のテストでは同じインキ量のため右が濃くなっています。
また、文字が少し太くなっていますが、インキ量を抑えることで大半の方にとって違和感の無いレベルに収まるという判断でここまでが限界としました。
裏面はフラットのままで、凸にはならないように刷るのを基本としています。
実際にどの位まで圧を加えるかはお客さまのお好みやデザインの方向性をお伺いして決めていきます。
ある程度の紙厚がないと凹み代が出ませんので、凹みがご希望の場合は紙厚0.4mm以上をおすすめしています。
右は凹みを強調するために胴張りを柔らかく仕立ててさらに圧を加えています。
凹み感が良く出て目をひきますが、文字品質の劣化は私の感覚では許容範囲外です。
(画像だと判りにくいのですが。)
薄い紙で凹み感を出したい場合や、裏面が見えないブックカバー等に用いる場合がありますが、基本的には避けたい方法です。
裏面の凸を許容するかどうかは、いろんな考えがあって良いと思いますが、印刷人が「それが活版の良さだ」と言うのは明らかな過ちだと指摘しておきたいです。
(当然、エンボス加工とは別の話しです。念の為)
裏面が出っ張らないように刷る方法では、強圧を加えると紙のテクスチャが均されて跡のように見えることがあります。
非常に判りずらいと思いますが、下の画像の真ん中がその例です。
ローラーの調整が行き届かず、この斜面にインキが着くとさらに印刷品質が悪くなります。
版の種類によってはバリが目立つものもあり、印刷に影響するものはルーペで見ながらビュランという彫刻刀で削りますが、バリが字面に近すぎると修正不可のこともあります。
Letterpress Platemaking, Pergamon Press Ltd., 1969より引用 |
一目瞭然、全くダメダメですね。
国産の亜鉛版が生産中止になって輸入品に切り替わってから、よりシビアなローラー調整が必要になったような気がします。