高すぎれば版にインキが供給できませんし、低すぎれば非画線部(インキが付いてはいけない部分)を汚してしまいます。
そんな大切なポイントですから入念に調整するのですが、温度や湿度によってローラーの径が変わるためでしょうか、季節の変わり目には再調整が必要になることがあります。
また、活字の高さは生産国や鋳造所によって異なりますから、これらを使い分ける時にもローラー高の調整が必要になることがあります。
ローラー・セッティング・ゲージによってローラー高の数値管理が可能になりますので、ベストセッティングを記録しておくことにより維持管理がずっとシンプルで楽になります。
すなわち、調子を崩した際に、何が原因かを掴みやすくなるのです。
これもいわゆる「見える化」の1つと言えますね。これまでにも何度かブログに書きましたが、今回は使い方のちょっとしたコツを公開します。
(参考ブログ)
手フートの飼い方⑥ インキローラーの調整
手フートの飼い方⑦ トラブル診断http://kappan.did.co.jp/2011/04/blog-post_11.html
【ローラー・セッティング・ゲージの使い方】
手フートを例にして説明します。
はじめにローラーコロとローラーレールを掃除して、異物や汚れを取っておいてください。
①チェースを外します。
②インキディスクにインキをのせ、ローラーにのばします。
版胴の上下左右4箇所を測定します。
ローラーが2本ありますから8回測定することになりますが、
ローラーとコロに問題が無い事が明確な場合は1本のみで良いでしょう。
③最初の測定位置にローラーを移動させます。
誤差が少なくなるよう、毎回同じ箇所を測定するようにします。
④ローラー・セッティング・ゲージを版胴とローラー間に差し込みます。(図参照)
ゲージにインキの帯が着きます。通過させるローラーは1本のみです。
⑤測定するローラーを過ぎたらゲージの棒をひねって回転させ、インキの帯がどこにも
触れないように注意しながら引き抜きます。
下のローラーを測定する時はこの方法で上のローラーをやり過ごします。
⑥ゲージに付着したインキの幅を測定します。
これでローラー高を相対的に数値化できます。
インキの帯が細い = ローラー高が高い
インキの帯が太い = ローラー高が低い
となる訳です。
コンパスやディバイダを利用すると測定しやすいです。
同じ場所を2~3回測定してバラツキが大きいときは、ローラー、コロ、レール、版胴の
何れかに問題があります。
版胴の上下左右を測定してバラツキがないかを確認します。
⑦試し刷りもしながら最適なローラー高を記録しておきます。
版の種類(高さ)にもよりますが、2~3mmの間に最適値があるはずです。
プライベート・プリンターさん限定になりますが、ローラー・セッティング・ゲージの販売も行なっています。
活字高0.918インチ仕様 3,000円/個(税別)
活版グッズfor Private Letterpress
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なお、余談ですが、ほとんどの手フートは、ローラー高の調整機構がありません。
(ADANAのようにローラーコロで高低の使い分けができるものもあります)
高くする場合はローラーレールにテープ等を貼ることで調整できますが、レールの高さより低くすることはできません。
その場合は活字やメタルベースと版胴の間に薄紙を入れるしかありません。調整しきれない場合はローラーの巻き替えを検討する方が良いかもしれません。
(ローラーは消耗品です)